インプラントにおける骨造成の方法4種と骨減少を予防する手法1種について解説します。

健康

骨の量や厚みが足りないと、インプラントを入れることが出来ません。
インプラントは短いものでも8mmほどあるので、最低でも骨の厚みが8mm以上は必要です。

そのため、骨が足りない場合は骨量を増やしておく必要があります
骨量を増やしておく事前準備となる手法が【骨造成】です。
骨が足りない場合でもインプラントをあきらめることはありません。

この記事では、インプラントには骨量が足りないと診断された方に向けて、骨造成の方法と骨減少を防ぐ方法についてわかりやすく解説しています。

ぜひ最後までお読みください。

べへ
べへ

<骨が足りない状態でインプラントを入れると>
インプラントが骨から飛び出る
インプラントがぐらつく
インプラントが脱落する などのリスクが高まります。                

骨を減少させる要因はいくつかあります。

  • 歯を失ったあと長期間あく
  • 歯周病
  • ブリッジや入れ歯が合っていない
  • 加齢

インプラントを計画したときに受ける事前検査(X線やCT)で、骨量が足りているか足りていないかが分かります。
検査で骨量が十分あるとわかった場合は骨造成は不要です。

  • 骨量が足りない場合でもインプラントが可能になる
  • インプラントを安定させ脱落のリスクを減らせる
  • インプラント寿命を延ばせる
  • 手術が必要
  • 手術に伴う感染リスク
  • 治療期間が長くなる
  • 保険適用外
  • 骨造成手術の費用が別途かかる
  • 全身疾患がある場合は骨造成ができないケースがある
  • 高い技術が必要とされるため、どの歯科医院でも行えるわけではない

手術後は腫れますが、術後1週間ほどで腫れはだんだんと引いてきます。
(手術範囲の大きさや個人差により期間は左右される)

麻酔が切れたら痛みが出てきますが、腫れと同様に術後1週間ほど痛みも消えていく場合が多いです。
痛みがある場合は、適宜、処方された痛み止めを服用しましょう。

もし痛み止めを飲んでも1週間以上耐え難い痛みが続く場合痛み強くなる場合は、細菌感染を起こしている可能性があるので、すみやかに歯科医院に相談してください。

一般的に骨造成の成功率は高く、80~90%といわれています。
※ 患者の健康状態や骨の状態、生活習慣、手術の難易度、そして医師の技量によって成功率は左右されます。

骨を増やす部位や量によって手法が異なります。
手法はおもに4種類あります。

  • ソケットリフト
  • サイナスリフト
  • GBR法
  • ボーングラフト

それぞれ見ていきましょう。

ソケットリフトとは、上あごの骨が足りない場合に骨を補充する方法です。

上あごの骨の厚みが5mm以上あり、治療範囲が歯1本ていどの狭い範囲である場合に適用されます。
ソケットリフトと同時にインプラント埋入を行うこともあります。

◆適用部位:上あごの奥歯部分

◆費用:3~10万

<メリット>
傷口が小さいので体の負担が少ない
・インプラント埋入を同時に行う場合は治療期間を短縮できる

 ◆<デメリット>
 目で見えない場所であるため、手術中に上顎洞の粘膜を傷つけてしまうリスクがある
   粘膜をあやまって傷つけた場合、副鼻腔炎や蓄膿症を引き起こす恐れあり
 ・増やせる骨の量が限られている
 ・繊細な手法のため医師の高い技量が必要

流れ

  1. 歯ぐきを切開し、縦方向に骨に穴をあける
  2. 上顎洞(じょうがくどう。鼻の横側にある空洞)をおおっている粘膜を棒状の器具で押し上げて空間を広げる
  3. 広げた空間に骨補填材をいれる
  4. 骨補填材を入れたら穴をふさいで歯ぐきを縫い合わせる
  5. 骨が形成されるまで待つ(3~6か月ほど)
  6. 骨ができあがったら、インプラント体(根元部分)を埋入する

サイナスリフトとは、ソケットリフトと同じく上あごの骨が足りない場合に骨を補充する方法です。
ソケットリフトよりも広範囲にわたって大量の骨を補充できます。

多数の歯を欠損している場合や、上あごの骨の厚みが5mm未満の場合に適用されます。

◆適用部位:上あごの奥歯部分

◆費用:15~35万

 ◆<メリット>
 ・広範囲に骨を補充できる
 ・骨を大量に補充できる
 ・上顎洞(じょうがくどう)の粘膜を目で確認しながら手術できるので、粘膜を傷つけるリスクが
  低い

 ◆<デメリット>
 ・ソケットリフトよりも骨形成まで期間がかかる
 ・ソケットリフトよりも体の負担が大きい
 ・ソケットリフトよりも腫れやすい
 ・インプラント埋入を同時に行えた場合も、ソケットリフトよりも土台の骨が安定するまで時間
  を要する

流れ

  1. 上あごの歯ぐきを切開し、横方向に上あごの骨に穴をあける
  2. 骨にあけた穴から上顎洞の粘膜をもち上げる
  3. もち上げた粘膜の下にできたスペースに骨補填材を入れる
  4. あけた穴を閉じて歯ぐきを縫い合わせる
  5. 骨が形成されるまで待つ(6~9か月)
  6. 骨ができあがったらインプラント体(根元部分)を埋入する

骨を補充するというよりも、骨補填材を入れることで骨の再生をうながし、新たな骨が作られるように誘導する方法です。
GBRとは、Guided Bone Regeneration の略で、日本語では骨誘導再生法といわれます。

◆適用部位:おもに上あごに適用されるが、下あごにも施術可。

◆費用:3~15万

 ◆<メリット>
 ・適用範囲が広い(上あご・下あご共に可)

 (ほとんどの場合インプラント埋入を同時に行うため)
 ・体への負担が少ない
 ・治療期間の短縮につながる
 ・細菌感染のリスクが減らせる

 ◆<デメリット>
 ほかの手法と同じく、術後1週間ほど腫れや痛みが出る

流れ

  1. 歯ぐきを切開する※①
  2. インプラントを埋入する
  3. 骨が足りない場所を人工膜で覆う※②
  4. 人工膜で覆った部分の内部に骨補填材を入れる
  5. 切開した歯ぐきを閉じて縫い合わせる
  6. 骨が再生するのを待つ(6か月~10か月)
  7. 骨ができあがったらインプラント体(根元部分)を埋入する

※①骨補填材として自分の骨(自家骨)を使う場合は、1の前に自分の骨を採取しておく。採取場所としては下あごの先端や下あごの奥歯外側が一般的。採取した自家骨は事前に粉砕し細かくして使用する。
※②人工膜で覆うのは、骨の再生の妨げる細胞の侵入を防ぎ、骨の再生を促す細胞を優位的に働かせるため

骨の薄くなっている箇所に骨材を移植し骨を再生する方法です。

骨材には自分の骨(自家骨)や人工骨、または自家骨と人工骨を混ぜ合わせたものが使われます。
自家骨を使う場合は、下あごの先端・下あごの親知らず近くから採取するのが一般的です。

GBR法もボーングラフトの一種ですが、ボーングラフトはより広範囲にわたって骨の再生が必要な場合に適用されます。

◆適用箇所:上あごと下あご共に適用可能

◆費用:10~30万円

 ◆<メリット>
 ・適用範囲が広い(上あご・下あご共に可)

 (自家骨を使う場合)
  ・拒絶反応のリスクが低い
  ・骨の再生率が高い

 (人工骨を使う場合)
  ・骨採取の手術が不要
  ・自家骨に比べて量の限度がない

 ◆<デメリット>
  (自家骨を使う場合)
  ・骨採取手術が必要
  ・採取できる骨量に限度がある
  ・採取手術により体への負担が増える
    合併症・感染症のリスクが高まる
 
 (人工骨を使う場合)
  ・拒絶反応の心配がぬぐえない
  ・骨の再生率が自家骨に比べて劣る

流れ(自家骨を使う場合)

  1. 下あごから骨をブロック状に採取する※①
  2. 骨が薄い部分に採取した骨を貼り付けてネジで固定する(移植)
  3. 移植した骨ブロックが土台の骨と同化するのを待つ(4か月~6か月)
  4. 骨ブロックを固定していたネジを取り外す
  5. 骨ができあがったらインプラント体(根元部分)を埋入する

 ※①人工骨を使用する場合、1の工程は省かれる

  • 全身疾患や既往歴を事前に申告する
  • 服用している薬やアレルギーを事前申告する
  • 手術日の2週間前から禁煙する
  • 手術の前日は適量であれば飲酒可(手術当日は飲酒不可)
  • 手術の前日は早めに寝て体調を整えておく(眠れなくても横になって目を閉じて休むこと)
べへ
べへ

それぞれの健康状態によって異なるため、担当医師の指示に従ってください

  • 禁煙すること(術後少なくとも2か月)
  • スープやおかゆのような噛まずに飲み込めるものを食べる(術後の数日間)
  • 咀嚼する場合は手術した反対側の歯で噛む
  • 刺激物(辛い物や熱いもの)の摂取を避ける
  • 飲酒を控える(術後1週間ほど)
  • 激しくうがいをしない
  • 傷口に歯ブラシをあてない
べへ
べへ

不明点や心配ごとがあれば、担当医師に確認しておきましょう

抜歯後に歯を欠損したまま放置していると、2~3年で骨が40%~60%減少するといわれています。

抜歯後インプラントやブリッジなどの処置まで期間があいてしまう場合に、骨の減少を食い止めるための予防措置として行われるのがソケットプリザベーションです。

ソケットプリザベーションは、抜歯直後~1か月以内に行うことが望ましいとされています。

◆適応箇所:抜歯した部分

◆費用:5万~10万

 ◆<メリット>
 ・抜歯後の骨減少を防ぐことができる
   インプラントを入れる際に骨造成が行う必要がなくなる
 ・抜歯後すぐに行う場合は、ソケットプリザベーションでの処置により傷口が完全に閉鎖される
  ため、通常よりも抜歯後の痛みが軽減されることが多い

 ◆<デメリット>
 骨造成と同じく、費用がかかる、待期期間が必要、保険適用外、などがあげられるが、それ以外は
 特にない

流れ

  1. 抜歯した歯があったところの穴を清掃する
  2. 穴に骨補填材を入れる
  3. 補填材を入れた穴に人工膜をかぶせる
  4. 人工膜を歯ぐきに縫い付けて穴をふさぐ
  5. 骨が再生するのを待つ(3か月~6か月)
  6. 骨ができあがったらインプラント体を埋入する
  • 骨造成をすることで骨が足りない場合もインプラント治療が可能になる
  • 骨造成の手法はおもに4種類ある
  • 部位や増やす骨量により、適切な骨造成の手法がとられる
  • 抜歯後の骨減少を防ぐ手法がある

参考文献:歯チャンネル

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