インプラント治療は、通常の歯と同じように噛めることや見た目も美しいというメリットがある一方、治療費が高いことがハードルとなっています。
なぜこんなに高いの、、、もっと安ければいいのに・・・
そこで目にとまるのが激安価格のインプラントです。
高品質の治療を維持しつつ歯科医院の経営努力で激安価格を実現しているなら、激安インプラントはアリでしょう。
まさにハードルを下げてくれる救世主です。
はたして激安インプラントはアリなのでしょうか。
結論から言ってしまうと、品質や安全性の面から激安インプランドはおすすめできません。
なぜなら、大切な品質や安全性を削ることで価格の安さを実現している可能性が高いからです。
この記事では、激安のわけとそのリスク、そして事前に確認しておくべきこと8点について解説します。
また、インプラント治療で少しでも価格を抑える方法についても触れていますので、インプラント治療を検討中の方は目を通して頂ければと思います。
そもそもなぜインプラント治療は高額なの?
インプラントは【保険適用されない】ため、歯科医院で自由に料金を設定できる治療法です。
1本あたりの相場は・・・
◆全国平均:30~45万円
◆都市部 :35~55万円
試しに手あたり次第、全国各地の10医院ほどのホームページをのぞいてみたところ、ほぼこの価格帯におさまっていました。
高額になる主な理由
- 素材が高い
- 事前の検査料
- 医師の技術料
- 設備投資が必要
- 保険が適用されない
料金の内訳
検査費用 | 1.5万 ~ 5万円 |
インプラント素材(1本あたり) | 5万 ~ 20万円 |
手術費用 | 15万 ~ 35万円 |
骨造成(必要な場合のみ) | 3万 ~ 15万円 |
1本10万円台は激安インプラント
通常インプラント治療を受ける場合、最低でも1本30万円はかかります。
1本20万円台のインプラントはかなり安価だと言えるでしょう。
さらにそれ以下の10万円台なら間違いなく激安です。
もちろんなかには
・高品質の素材を大量に仕入れることでコストを抑える
・多くの手術数をこなして薄利多売にし、ひとつひとつの手術費用を抑える など
経営手腕を駆使して品質と安全性を確保している歯科医院がゼロとはいえません。
優良医院であるかを見極めるには、次の項「激安インプラント、安さのわけ」にあげている
8点を全てクリアしているか?がポイントになります。
激安インプラント、安さのわけ
本来であれば1本30万円はかかってしまうインプラント。
どのように激安価格を実現しているのか。
激安の理由や通常のインプラントの違いはおもに8点あります。
- 安価なインプラント素材を使用
- 事前の検査をはぶく
- 事前の処置をはぶく
- 設備投資をしていない
- 医師の技量
- 一部の金額が激安なだけ(別途料金が加算される)
- 保証がない
- メンテナンスを行わない
1~8によるリスクを解説します。
【1】安価なインプラント素材を使用
- マイナーなメーカー
- 欠陥品
- 使いまわしの素材
- 品質基準に達していない

インプラント素材はメーカー間での互換性がないため、通常トラブルが起こった場合は一部分だけを別メーカーで代用することはできません!
【リスク】
・破損しやすい
・メーカーが倒産する可能性
・引っ越しした場合そのメーカーを扱っている歯科医院が見つからない
⇩
出回っていないメーカーだとトラブルが起こった場合、同じメーカーの素材が調達できず、
最悪の場合は新たにインプラントを入れなおすことになりかねません。
そうなったら、せっかく受けたインプラント治療が全くの無駄になるだけでなく、経済的にも身体的にもダメージを受けてしまいます。
【2】事前の検査をはぶく
- X線検査をしない
- CT検査をしない
本来はX線検査(平面画像)で骨の厚みを調べ、CT検査(3D画像)で骨格や骨量を立体的に把握する必要がありますが、設備がないなどの理由で検査を行っていないケースがあります。
つまり、医師の目視だけで適当な場所にインプラントを入れることになり、インプラントの位置や角度の精度が低くなる可能性大です。
【リスク】
綿密な検査をしないインプラント手術は噛み合わせに問題が生じるリスクが大きい
⇩
・せっかく手術しても噛めない
<噛み合わせが悪いまま放置すると・・・>
・全身の健康状態に悪影響を及ぼす(虫歯、歯周病、肩こりや頭痛ほか)
・心にも悪影響を及ぼす(うつ病や認知症のリスク)
【3】事前の処置をはぶく
- 手術前にすませておくべき歯周病や虫歯の治療をしない
- 骨量が足りていないのに、骨造成の処置をしない
【リスク】
・虫歯や歯周病の歯の事前治療しないと、口内環境を良好に保てず細菌感染を起こしやすい
→ インプラント周囲炎につながる
・インプラント治療後に虫歯や歯周病の歯を治療すると、噛み合わせに影響が出る
・インプラントを埋入部の骨が足りていないと、インプラントが固定されずぐらつきや脱落する
恐れがある
【4】設備投資をしていない
設備投資をしないことで、費用を抑えている可能性あり
インプラント治療には正確で細かい計画が不可欠であり、また外科手術をともなうので、歯科医院には高額な設備投資がもとめられます。
そして、設備投資にかかった費用もインプラント治療費に組み込まれていることが一般的です。
設備投資をしない分、価格は抑えらえることになります。
つまり、激安インプラントはCT検査機材がない、専用の手術室がないという可能性があります。
【リスク】
・機材がないため必要な事前検査が行われない → 手術精度が下がる
・大部屋で行う外科手術は衛生面に不安がある(細菌感染のリスク)
【5】医師の技量不足
技量不足の医師が手術をおこなう可能性あり
インプラント治療は研修医が行ってよいことになっているため、知識や技量が未熟である経験の浅い医師が実績を積むために手術を行っている可能性があります。
【リスク】
・不適切な手術
→ 噛めない、体の不調、インプラント脱落などのトラブルが起きる可能性
<豆知識>
研修医とは・・・6年間の大学教育を受けた後、国家試験に合格(歯科医師免許を取得)してから
義務付けられている研修期間(1年間)にいる新米医師。
【6】一部の金額が激安なだけ(別途料金が加算される)
激安価格はインプラントの一部の金額で、別に追加料金がかかる可能性あり
インプラント体(骨に埋め込む土台部分)のみの料金で見込み患者を呼び込んで、来院したときに別途追加料金の説明をされる場合があります。
【リスク】
足を運ぶ手間と交通費がかかる
<良い点>
事前に激安ではないとわかるので、この歯科医院を避けることもできる
【7】保証がない
激安インプラントは治療後の保証がない可能性が高い
大半の歯科医院では通常5~10年の保証期間をもうけており、保証期間中にトラブルが起こった場合は無償または少額の費用で再治療を受けられます。
その保証がない場合は何かトラブルがおこっても、再治療を受けるには実費を支払わなければなりません。
【リスク】
トラブルや不具合が起きたら実費を負担することになる
【8】メンテナンスを行わない
治療後の定期メンテナンスを行わない可能性がある
インプラント寿命を延ばすために治療後の定期メンテナンスが欠かせません。
仮にさまざまなハードルを乗り越えて、インプラント治療が問題なく終わったとしても、その後のメンテナンスをおろそかにすると、のちのちトラブルにつながるリスクが高まります。
【リスク】
・トラブルの兆候を見逃がす
・口腔内環境の悪化
・インプラント周囲炎のリスクが高まる
・別の歯科医院で定期メンテナンスを受けても、不具合が出た場合に対応できないケースがある
価格を抑えるには
ここでインプラント治療の価格を少しでも抑える方法をご紹介しておきます。
医療控除を申請する
自分で申告をする必要がありますが、所轄の税務署で手続きすることで、1年間(1月~12月)に支払った医療費が一定の金額を超えた場合に、税金(所得税と住民税)が軽減されます。
申告できる医療費の金額は上限200万円です。
もし1年間の医療費の合計が200万円を超える場合、歯科医院への支払いは年内に済ませたとしても、200万円を超えた分については領収書は翌年分として出してもらえないか、歯科医院に聞いてみることをおすすめします。
例えば、その年の1月~12月に支払った金額が合計250万円だった場合、50万円分については翌年の日付で領収書を出してもらいたい旨伝えてみましょう。
その際は歯科医院に「医療費控除のため」と伝えて構いません。

税務署への医療費控除は、5年前までさかのぼって申告することが可能です
治療費をクレジットカードやキャッシュレス決済で支払う
ポイント還元率が高い方法で支払うと、治療費の何パーセントかはポイントとして戻ってきます。
歯科医院に前もって導入されている支払い方法を聞いておき、ポイント還元率が高い方法で決済しましょう。
クレジットカードで支払う場合は事前に利用限度額を確認しておいてください。
モニター価格を利用する
まれに、ホームページでの症例写真やSNSに宣伝として掲載することを条件に、モニター価格でインプラント治療の募集をしている歯科医院があります。
掲載されることに抵抗がなければ、検討してみるのも一つの手です。
事前に確認しておくべきこと8点
インプラントを検討される方へ、事前に確認しておくべきことをまとめてみました。
もし医師からの説明がなかった場合や聞きのがしたことがあれば、以下のことは必ず聞いておきましょう。
インプラント治療を成功させるために、治療価格にかかわらず、重要なポイントです。
【事前に確認しておくこと】
1.インプラント素材の確認
どこのメーカー? → 別記事「インプラントのトップメーカー(海外と国内)」をご覧ください。
厚生労働省の認可を受けているメーカーか?
2.事前検査の確認
X線検査はするか?
CT検査はするか?
3.インプラント前の処置すべき歯の確認
手術前に治療しておくべき歯はないか?
骨量は足りているか?
4.手術環境の確認
専用の手術室で手術するか?
5.医師の技量の確認
手術をするのはインプラント専門医か?
※手術数だけでは技量の判断がつかないので、手術の回数を聞くよりは日ごろからインプラント治療の研鑽を積んでいる医師(=専門医)かどうかを確認したほうがよい。
6.追加料金がかからないかの確認
来院前に「他に料金がかからないか?」電話で聞く。
7.保証の確認
治療語の保証はあるか?
(保証があるなら)保証内容は?(適用条件/どれくらい費用負担の軽減されるか)
8.定期メンテナンスの確認
治療後の定期メンテナンスを行っているか?
まとめ
インプラントは入れて終わりではありません。
治療を終えてから、長く快適に使えてこそ治療が成功したといえます。
最初の金額を安くすませた結果、数年で使えなくなったということになれば、お金をドブに捨てることになるだけでなく、体にも深刻なダメージを与えかねません。
難易度の高いインプラント治療を成功させるには、丁寧なカウンセリング、精密な検査、高品質な素材、高い技術を持つ医師、清潔な手術室、そして手厚いアフターケアという万全の体制が不可欠です。
こういった成功の必須条件を欠いている場合の激安インプラントはおすすめできません。
みなさまがインプラント治療をしてよかったと思えるよう、心から願っています。